読書|火星は錆でできていて赤いのだ(楠本まき) – 生きる歯ごたえ

読書|火星は錆でできていて赤いのだ(楠本まき)

先日記事を書いた『赤白つるばみ・裏』と同じ単行本に収録されている作品です。
ちなみに、表紙のキャラクターは『火星は錆でできていて赤いのだ』の主人公・玲於奈です。

全3話、36ページと短いながらも、選択的夫婦別姓についてや結婚制度を使うか使わないか?というセンシティブな内容が、日常のひとコマとして重くない雰囲気で描かれています。

私は独身で、今まで本気の結婚願望もなく生きてきて直面してない問題ですが、
実際に結婚を考えると、こういう面倒くさいこと考えていかなきゃならないんだな~と現実を垣間見た感じがしました。

『赤白つるばみ・裏』について書いた記事はこちら

『赤白つるばみ』上・下について書いた記事はこちら

こんな人におすすめ

  • 結婚するなら当然自分が相手の姓に合わせるものだと思っている
  • 結婚するなら当然相手が自分の姓に合わせるものだと思っている
  • 選択的夫婦別姓について考えたい
  • パートナーのジェンダー観が古くて会話が合わない
  • 身近な人とパートナーシップについて話してみたいので、きっかけとなるようなとっつきやすいネタがほしい

タイトルについて

変わったタイトルですよね。
これは作中に出てくる玲於奈の甥・空が、火星探検隊になりきって言う台詞の一部でもあります。
「火星」のモチーフは繰り返し登場し、放射線量が多くて住めないことなどが、東日本大震災および原発事故後の日本と重ね合わせるように描かれます。

火星って何で出来てるのかな?と気になったので国立天文台のサイトを参照してみたら、
実際に錆を多く含んでいるから赤っぽく見えるのだそうです。
(たぶん理科の時間に習ったんだろうけど忘れてる…)

火星とは|国立天文台(NAOJ)

火星は地球と同じく岩石でできた惑星です。直径は地球の半分ほどで、二酸化炭素を主成分とするごく薄い大気に覆われています(火星の大気圧は地球の1000分の6)。火星は全体的に赤っぽく見えますが、これは、表面の岩石や砂が酸化鉄(赤さび)を多く含んでいるためです。また、岩石の成分の違いや地形の影響により、ところどころに黒っぽい模様(もよう)があります。火星表面でときおり発生するダストストーム(砂嵐)などによって、模様は薄くなったり見えなくなったりすることがあります。

火星とは|国立天文台(NAOJ) https://www.nao.ac.jp/astro/basic/mars.html

この物語が連載されていた時期

『ココハナ』には2012年6月号、2019年6~7月号の3回(本編、続・前編、続・後編)連載されていた作品で、本編と続編の間には、8年の歳月が経っている設定です。

『赤白つるばみ』『赤白つるばみ・裏』の連載の合間に挟まるような掲載のされ方をしています。
おそらく東日本大震災前の2009年から連載開始していた『赤白つるばみ』シリーズには入れにくかった、震災についての著者のメッセージを反映するため、別の作品として制作されたのではないかと考えられます。

主な登場人物

玲於奈(れおな)

真理生の妹。研究者、独身
同じ研究者仲間の 瑩 一郎と付き合っているが、 瑩 一郎のジェンダー観が古くて価値観が合わず、本編では別れ話が出たものの、続でもまだ付き合っていて結婚話も出ている。
甥の空のためにガイガーカウンターを自作しようとしている。

真理生(まりお)

玲於奈の姉。多忙を極める医者、既婚、2児の子持ち。夫も医者のいわゆるパワーカップル。
どちらの姓にするかは夫とじゃんけんで決めて、真理生の姓を採用。
時々名前のせいで男性に間違われる。
「「生」が「緒」だったら言われないんですかね?」と看護師にぽろっと漏らすところが妙にリアリティがある。

パートナーシップについて考えさせられる物語

本作品の内容は『赤白つるばみ・裏』に出てくる「知人の夫を『ご主人』と呼ぶかどうか問題」や「『コイツ何もできないんだよ』とデレるウザい元カレ問題」などともリンクしています。1冊で1つの作品のように受け取れます。

お嬢さんを僕に下さい

『おっさんずラブ』などのドラマでも使われていた、テンプレ化した台詞ではあるものの、
受け取る側にとっては不快に思われる要注意ワード。
瑩 一郎 が玲於奈の両親に会った時に、これを言ってしまうのですが、それを聞いた玲於奈父のリアクションが絶妙!ナイスお父さん。

テンプレだから、緊張する場面だし傷つけちゃいけないから、と日本全国で言われまくって何となくOKになってズルズル使われ続けてる言葉かもしれないけど、やっぱ気付いた人が疑問を呈していかないと、思考停止して使う人はいなくならないですよね。

私もパートナーから親に言ってほしくないし、子供がいたとしたらその婚約者からも言われたくない言葉です。物じゃねえから~
結納で夫側が妻側にお金積む習慣も、なんか感じ悪く思ってしまう。

私の嫌なことを相手にもさせたくないし。

玲於奈が、真理生の夫と夫婦別姓について話している時に言う台詞です。
瑩 一郎 が玲於奈の姓に合わせるとしても、玲於奈が抵抗を感じるように、 瑩 一郎 にも感じさせたくない、と。

この視点を持てるかどうか?がパートナーシップを維持する上で最重要なんじゃないかと思うんですよね。
姓以外の日常生活の部分では意識している方が多いかもしれませんが、結婚となると特別視して保守的になってしまう人もいませんか?

選択的夫婦別姓に反対し、夫婦同姓を主張する人たちにも、
このような当事者の悩みを知ってほしいな、と思います。

「選択的」なのだから、同性にしたい人たちはすればよくて、別姓にしたい人たちは別姓にすればよい、だけの話なのになんでこんなに長年もめているのでしょう。

同姓主義者は「家族の絆」を主張しますが、DVや子供への虐待は、同姓にすれば解決する問題ではないですよね。
パートナーへの「所有感」を持ってしまうと、よりDVにつながりやすいのではないかと危惧しています。

婚活に秒で冷めた話

この記事で書いたように、結婚は力関係が非対称な方が長続きするらしいです。
不均衡な方が人は楽なんですよ。現状維持できて。
でも、それでいいのかよ?って思ってしまう。そんな結婚私はしなくていいよって。
認知の歪みで、ある特定の性別を持って生まれた人を劣位に置くってのが受け付けないんですよね。
ビジネスで「アップデート」をことさら強調するのに、恋愛や結婚に対する考え方は保守的な人ってまだまだ多いですしね。

著者あとがき

大体の作品というものは、時が経過しても古びない、というものが褒め言葉だが、この本の中に描いたいろいろな事柄は、(信念の普遍性を担保しつつも)なるべく早い時期に、ああそういえば昔はそうだったね。今となっては信じがたいけど。と、言われるようになってほしいと思っている。

『赤白つるばみ・裏/火星は錆でできていて赤いのだ』P174

『赤白つるばみ・裏』も含めてのあとがきですが、連載当時から数年経っている2021年でも、現在進行形の問題が多いです。
2020年以降、世の中がコロナ対応中心になるのは仕方ないですが、遅々として進まないなあという印象。

法務省:選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について

今回、調べるまで知らなかったのですが、法律用語では「名字」や「姓」のことを「氏」と呼ぶため、法務省的には「選択的夫婦別氏制度」って呼ぶらしいです。

まとめ

独身だから関係ないや。とパートナーシップや結婚について、私はあまり真剣に考えてこなかったのですが、よくよく考えてみたら、現行の制度やそれに適応した保守的な考え方の人たちに馴染めないから「別に私はいらないよ」という態度を取ってきたような気がすることに思い至りました。

本作品に出てくる登場人物たちのように、自分はこう思うと伝える、相手の言い分も聞く、自分のされて嫌なことは相手にもさせたくないと考えながら日々の行動を決定する。
そんな関係性を築いていけるなら、特定のパートナーと長く付き合うことも可能なのかな。と思いました。

ロールモデルがいないことをやる、多数派と違うことをやるってストレスもかかるし、時には長い物に巻かれる方が楽で逃げたくもなるけど、自分たちが今やる選択が、後の世代にどんな影響を残していくのか、そこまで考えて生きる必要がある。
それは、ジェンダーに関しても、環境に関しても。

今はまだ「小さい声」かもしれない声を、自分には関係ないからとスルーするのではなく、いずれ直面する問題であり、今直面している人たちもいると考えた上で、広い視野を持ちたいと気の引き締まる思いにさせられた1冊です。

3巻セットもありますので、ぜひ、『赤白つるばみ』上下巻と合わせてお読みください。

marizawa

人生に飽きっぽくて、生きる歯ごたえを探しながら生きてます。 少ない労働と少ない消費で生き延びつつ、FIRE目指して準備中。 副業歴はブログ3回ほど挫折、DIYのYouTubeチャンネル開設(更新少ないけど継続中)、今4度目のブログ。 投資歴はFX1年ほど(休止中)、積立NISAと積立仮想通貨1年目。 発達障害(ASD)傾向ありのうつ病 【Twitter】@85_tae 【YouTube】https://www.youtube.com/channel/UC27zMz4qKnEprx8ohPzVpGg?view_as=subscriber

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