「愛について語るときにイケダの語ること」ポルノでも感動ポルノでもなく – 生きる歯ごたえ

「愛について語るときにイケダの語ること」ポルノでも感動ポルノでもなく

半年ぶりの東京

今回は、アップリンク吉祥寺にて「愛について語るときにイケダが語ること」のアンコール上映を観に行ってきた。

R指定だしキワモノ作品かと思いきや、ポルノでも感動ポルノでもない
カラッとした「日常系 遺作Vlog」だった。

「愛について語るときにイケダの語ること」

妙なタイトルだな、と思ったけど
レイモンド・カーヴァーの「愛について語るときに我々の語ること」って小説があるのね。

この映画を知ったきっかけ

落合陽一さんが公式サイトにレビューを書かれているのを
落合さんのnote購読して知った。これは期待大!
「愛について語るときにイケダの語ること」公式サイト

上映終了してるわ~と意気消沈するも
タイミングよく2021年11月末~12月上旬に、
アップリンク吉祥寺でアンコール上映されていたので観てきた。

2022年1月15日 横浜 シネマ・ジャック&ベティで公開決定 したので、
年明けてから観たい方は横浜へ

YAHOO!ニュースのインタビュー
毛利悟巳さん(共演 理想の彼女役)
真野勝成さん(撮影・脚本・プロデュース)
佐々木誠さん(構成・編集)

佐々木さん第三回の「小さい=かわいい=弱い」と決めつけられる論が
非常に面白かった半面、
日本人女性の健常者含むほぼ全員がこの概念押し付けられて生きてんだよ…
と男性の無自覚さが羨ましくなったり。

佐々木さん監督の映画
「ナイトクルージング」アマプラで見れる。企画が斬新すぎる…

「あぁ、見えてない。それがどうした?」視覚がなく、光すら感じたことのない全盲の加藤秀幸は、ある日映画を作ることを決める。加藤は、映画制作におけるさまざまな過程を通して、顔や色の実体、2Dで表現することなど、視覚から見た世界を知っていく。また、加藤と共に製作する見えるスタッフも、加藤を通して視覚のない世界を垣間見る。見えない加藤と見えるスタッフ、それぞれが互いの頭の中にある“イメージ”を想像しながら、SF短編映画がつくられていく。《演出上の都合により、冒頭約10分間は音声のみとなります。また、終盤にエンドロールが一度出ますが、その後もドキュメンタリーは続きます。最後までお楽しみください。》ドキュメンタリー作品。(C) 一般社団法人being there、インビジブル実行委員会

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映画の概要

監督・主演は四肢軟骨無形成症だった池田英彦さん(2015年に他界)
40歳の誕生日目前で彼が、スキルス性胃ガンステージ4と診断されてからの記録とフィクションの映画

池田さんは「港区おじさん」の船田さんに似てるイケおじ。おしゃれ
眼鏡とかかなり意識してるのでは?と思うも、「港区おじさん」が東京カレンダーのYouTubeチャンネルで公開されたのは2017年~。
池田さんは2015年に亡くなっているので、船田さんが結果的に池田さんに似たのか。

映画は大まかに分けて3つのパートからなる
・池田さんと風俗嬢のハメ撮り(撮影:池田さん)
・真野さんと池田さんの会話 (撮影:真野さん)
・真野さんが書いた脚本で池田さんと毛利さんが演じる理想のデート (撮影:真野さん)

これらの膨大な動画素材を佐々木さんが編集して映画にした作品。
時系列すら記録されてない約60時間の素材を58分にまとめるとは、神すぎる…。
しかもちゃんと作品として成立してるし、編集の力ってすごい

トークショーでの真野さんいわく、
「5万ぐらいの安いカメラで撮ってたから画質がスマホより悪い」
そう、映画館のスクリーンで見るには正直、画質がしょぼい(´・ω・`)

YouTubeで一眼レフや高級ミラーレス、シネマカメラ、GoProで撮られたハイクオリティなシネマティックVlogを見慣れた目には、もはや画質は気にせず見よう。としか言えない。

企画がすこぶる面白いんだから、いいじゃない。
むしろこれこそが映画。
画質と編集だけ綺麗なシネマティックは、おしゃれなだけで記憶に残らないのである。

「恋愛」に対する理想の高さと自己卑下

作中で語られる池田さんの理想の恋愛が、高い理想に聞こえる。
その理想の高さと現実の自分のギャップを客観的に把握しているがゆえに、
毛利さんとの会話シーンで素が出てしまい、真野さんにダメ出しされる。

ここはクライマックスと言えるシーンで、
恋愛リアリティーショーならそれはないだろう…という期待を裏切る展開。

「理想の恋愛」を演じたい自分と、「自分なんて…」と卑下する素の自分
その入り乱れる様は、何らかのマイノリティ性を持っている人は
少なからず直面するのではないだろうか?

相手なき恋愛のような、恋愛という概念そのものへの憧れ
「みんなはキラキラした恋愛をしているはずだから自分もする権利がある」
(それを経験してこそ一人前)
みたいなことを、池田さんは思っていたんだろうか。

高い理想ゆえのこじらせ感と、マイノリティ属性≒非モテ属性が絡むと
周りが妙に気を使ってしまうのも分かる。
リアルの世界でそれが叶う可能性が高くはないからだ。
(もちろん、モテて理想を叶えるマイノリティもいる)

男性・女性・異性愛者・同性愛者に関わらず、恋愛至上主義者というのは
理想ありきで相手が自分に合わせてくれることが前提だったり
理想を叶えてくれる相手を探し続けたり
または相手にひたすら迎合して自己犠牲したり

私は他者へのコントロール欲や、共感性が低いので面白味が分からない。
けど、需要と供給が釣り合ってれば本人たちは幸せなのかな。

「本当に、好きな人に、まだ出会ったことが、ないんだね…」
と、マウント取られても、痛くも、かゆくもないので、スルーしてね…

今後はメタバースで自分の好きになった相手に「中の人」がいるのか、
AIなのか分からない状態で、自分の理想とする
言動・行動・性行為をやってくれればそれで幸せなのだろう。

私もプライド高い割に、人間関係に関しては「自分なんて…」と思うタイプだ。
理由としては
・鬱により希死念慮が年中起きるので関係性の維持が難しい
・他者への関心を急速に失う(ASDゆえにそもそも関心が薄い)
・女性としてのジェンダーロールを押し付けられたくない(男性からも女性からも)
・長期的な視点に立てば私と過ごす時間は無駄なので他の人をパートナーにした方がいいよ!という合理性と効率性の追求(資本主義の可処分時間は奪い合い)

そんなこんなで恋愛不適合者の自分のまま、
気の置けない恋愛ができるパートナーを探そうと本気出したことないので、
結局理想が高いのかもしれない。

障害者の性について

障害者の性について扱った作品興味はあるテーマなんだけど、映画は意外と観てない。
(自分が鬱になって性欲が失せているから?
疲れなのか?出産可能年齢が終わりに近づいているからか?)

今後見たい作品

障害者を天使的に扱うな、感動ポルノ、など
現実から乖離した障害者像を求める社会への批判は、
ずいぶん昔から言われているが、現在進行形の問題だ。

池田さんが初体験の嬢に言われた『同じ人間じゃん』も、
言う側の健常者は優しさのつもりでも、
言われる側の障害者は差異の無視のように感じることもある。

障害者の性について、なるべく触れないようにしたい。
このマジョリティ側の思惑は何が根底にあるのだろうか?

・障害者から自分を性的対象として見られたくない?
・自分が障害者を性的対象として見たくない?
・障害者に性的な興味を持つのは差別だと感じる?
・生殖として捉えるなら健常者としたい?
・性は娯楽として楽しみたいから配慮する側になりたくない?
・自分がご奉仕される側でいたいから配慮する側になりたくない?

精神障害者の私も、身体障害・盲・聾・内部障害については詳しくない。
これマッチングアプリでフィールドワークしたら面白いんかなー

個人の話じゃないボリュームで蒐集して
マイノリティ向け「東京カレンダー」的に出していきたい感はある。

余命宣告されている人との恋愛・結婚の責任の重さ

それは看取りなのでは?

上記のYAHOO!ニュースのインタビューで役者の毛利さんが語っているように、
「最後のデートの相手が私でいいのか?」と悩んだという。

余命宣告を受けた人が、人生の最後に、今まで経験できなかったことをやりたい。
と思うのは自然なことだし、ある意味「前向きな無敵の人」とも言える。

亡くなる本人は「やり切った感」を得られるのかもしれないが、
残された側は、果たして割り切れるのだろうか?

「これで良かったのか?」
「他の人の方が適任だったのでは?」
「恋愛や結婚というより看取りor介護なのでは?」
そんな疑問に長年苛まされそうな気がする。

東洋経済|看取り士という仕事

余命宣告を受けた人との関係性がすでにあって、
看取りをするのであればまだ気持ちの整理はつきそうなもの。

しかし、余命宣告を受けた後に出会って、付き合うなり結婚するなりして
3ケ月や半年で看取るというのはなかなかヘビーなのでは。
(こういう疑問が湧いてしまうのも私の完璧主義ゆえだなー)

一緒にいられる時間は短いけど
最期のその日まで、私と充実した毎日を過ごそう
それがあなたにとっても幸せ
あなたが他界しても私は後を追わない
(ポエムみたいになってすいません)
ここまでのポジティブ思考ができるかどうかが試されるよな。

恋愛や結婚制度自体が優性思想を内包している?

恋愛の先に結婚があり、子育てがあり、自分たちの親の介護があり、
パートナー間で先に老いた方を後で老いる方が介護し、寿命を全うする。

政府の社会保障費の負担を軽くするためのシステムを、
恋愛や結婚に内在させていては、結局のところ
健常者同士の優性思想を内包した恋愛結婚に帰着するのではないか。

余命宣告を受けていなくとも、希死念慮が強い場合、
先々の約束なんかできないし、期待もされたくないから、
深いパートナーシップの構築を避けたくなる。
(「死にたい」感情で共依存する形の恋愛もあるだろうが)

余談だが「はなちゃんのみそ汁」が嫌いだ
はなちゃんも、末期がんで亡くなった はなちゃんのお母さんも、食育も嫌いではない
ただ、妻が出産・育児に耐えられる病状ではないと知っていながら
避妊をしなかった著者の行動が嫌い

余命宣告されている人が、女性であるか、男性であるかは、大きな違いだと思う。

男性の「受け入れられたさ」と暴力性は紙一重

作中で真野さんが「子供ほしくないのに生で中出ししたいのは何で?」と池田さんに質問する。
池田さん「気持ちいいから、受け入れられ感がいい」

男性の間では、これは共感を呼ぶ何気ない会話かもしれない。

ただ、女性が聞くと「ふざけんな」である。
言ってる男性が障害者か健常者かは関係ない。
女はTENGAじゃねぇんだよ

寝言はせめてパイプカットしてから言えよ。5万で済むだろが
(なお、池田さんがパイプカットしてるかどうかは知らない)

1回デフォルトで子宮と卵巣付いてて、
10代~40代まで生理に悩まされる身体持って生まれてみろや

「受け入れられた」安心感

男の安心感、支配欲を満たすために、
女の人生から安心感を奪うのを正当化するな

それだけのために女性が負担するコスト(金額は病院によるのでざっくりと)
【予防】
低用量ピル:月額3000円のサブスク(人により副作用あり、1日でも服薬忘れたら効果なし)
ミレーナ:3万円(5年間有効)

【望まない妊娠をしたら】
緊急避妊薬:1万5千円
絶費用:初期10万円~、中期40万円~

【産むなら】
子育て費用:3000万円/1人

このどれかを女性ひとりで稼いで用意するのが日本社会のデフォルトでは?
富裕層しかアクセスできない対処法なのを知っているのか

「コンドームが高い」とか何言ってんの?のレベル
飯おごらなくていいから買えよ

「悪い男に利用されたのね馬鹿な女」みたいな自己責任論で
個人の問題にすり替えてるから社会構造が変わらねえ
媚びるババアがいたから差別は再生産されてきた
だから口うるさいフェミババアとして生きる

早く身体性を喪失したい!!

少なくとも、女性主導で選べる避妊法が無料で用意されてないと生きていきたくねえわ
反出生主義なんで、ついでに安楽死施設も作ってくれませんか?
お前らの「生存本能」とやらで死にたくなる。

ブログ、Vlog、SNSの投稿は「遺作」として作れ

社会の多様性を担保するための遺作

私はそのつもりでブログを書いている。

他人の作ったコンテンツを見る際も、遺作として受け取れるかどうか
が選択基準になっており、量産型の娯楽作品には興味がない。
他人と共通の会話をするために見るような時間もない。

「遺作」としての「愛について語るときにイケダの語ること」は、
死や末期がんという重たいテーマが絡んでいる割に、非常にカラッとしていた。

アンコール上映後のトークショーで真野さんは、
作中の会話のシーンは、普段の池田さんとの会話をそのまま入れており、
意図的に明るい会話を切り取ったわけではない。と語っていた。

そんな、あっけらかんと死への準備を進める池田さんが、真野さんに託したことが
「自分と風俗嬢のハメ撮りの映画化」なのだから、かなり強烈なこだわりである。
(編集の佐々木さんの客観的な判断により、合計30時間にもなるハメ撮り動画素材はごく一部しか使用されていない。佐々木さん曰く「ありきたりだから」)

公務員でもある池田さんの「模範的な障害者」としての自分に貼られた
「品行方正」なレッテルからの逸脱を強烈に望んでいたのが伺える。

今回、池田さんの生き様、死に様を観て思ったのは、
バズを狙ったどこかの誰かの二番煎じのコンテンツを量産してる場合じゃなくて、
強烈に伝えたいことを「遺作」として作り上げろ!ってメッセージ

marizawa

人生に飽きっぽくて、生きる歯ごたえを探しながら生きてます。 少ない労働と少ない消費で生き延びる 投資歴はFX1年ほど、積立NISAと積立仮想通貨1年目。 うつ病歴10年×発達障害(ASD)傾向あり 【Twitter】@85_tae 【YouTube】https://www.youtube.com/channel/UC27zMz4qKnEprx8ohPzVpGg?view_as=subscriber

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